昨日、民放のBSニュースを見ていたところ、ある消防署で、消防士が勤務時間内に金をかけて卓球をしていたというニュースが流れました。
そのニュースのトーンは、まるで鬼の首を取ったかのようなスクープの取扱でした。その消防署を何日に亘って張り込んでいた記者に、突然取材を受けた消防士は、驚いたのでしょう。シドロモドロでした。当たり前です。突然ですから。
そのニュースが他の局では取り扱ったのかどうかは判りません。
実際に、その消防署の消防士「勤務時間」中に卓球をしていたことは事実のようです。そして、「賭け事」と言っても、負けた人がお金を出して、消防署の中で使う食材等を購入する共同の資金としていたようです。
記者は「内部告発」を受けて取材したということでした。
この取材を命じたデスクも記者も内部告発をした人も一体何を考えているのでしょう?
私の自宅のすぐ近くには、松本消防署があります。
毎朝、8時30分になるとサイレンが鳴り、ラジオ体操が始まります。消防士が全員で、声を掛け合いながら一生懸命体操をしています。
それが終わると、消防車、消火ホース等の点検を始めます。時には、年に1回も使われないかも知れないチェーンソーの運転もしばしばしています。エンジンを回して故障していないかの点検をしているのです。時には、大きな梯子車での訓練もしています。
消防士及び救急救命士等消防署に現業を行うために就業している人たちは、24時間をシフト割りして担当していると思います。いわゆる事務方のように9時~17時ではありません。
そして、その職務は、火災等の災難が発生したとき、病人が出たときに出動することです。そして、出動しない時間は「待機時間」です。「何もしていない」のではありません。「待機している」のです。
そして、火災現場・救急現場は、人の命がかかわっている現場なのです。
その待機時間は、いつ来るかも判らない危険の現場に出動するまでの「嵐の前の静けさ」ともいえる時間です。
消防署内に消防士がいるということは、世の中に火災が発生していないということであり、救急患者がいないということで、平和な状況なのです。
私は、消防士の本質について考えるたびに、あの「9・11」のアメリカ同時多発テロを思い出さずにはいられません。
彼らは、旅客機が衝突したセンタービルに勇敢にも向かって行きました。
上部階からは避難する人たちが降りてきます。しかし、消防士は、火災などが起きていると思われる上部に向かって行きました。
結果から言うと、避難者は「生」へと向かって進行し、消防士は「死」へ向かって行ったのです。
消防士は、本質的にそういう職業なのです。本当に頭の下がる思いがします。
それを9時~17時の間だけ仕事をしている人と同質に捉え、些細な行為を大仰に批判することは如何なものでしょう?
内部告発をした人、それを大仰に報道したテレビ局は、「消防士は待機しているときに教科書でも読んでいろ!」とでも言うのでしょうか?
乱暴なことを言わせてもらえば、卓球をしていてウォーミングアップができている消防士の方がデスクでコンピュータを眺めていた消防士よりずっと役に立つと思うのですが、どうでしょう。
生死をかけた出動であっても、救急車1回の出動手当が300円、危険な場所に出動しても1回500円、24時間消防署にいても給与の基準となる時間は16時間に制限されているということを皆さんは知っているのでしょうか?
こんなくだらない報道に負けずに、消防士さん頑張れ!!!