当事務所の2月15日付コラム欄に「東京高検検事長の定年を半年延長した閣議決定に異議!!!」のコラムを掲載しました。 ところが、本年4月19日、政府は、検察官の定年を63歳から65歳に引き上げることを主たる眼目とする検察庁法の改正案を国会に提出し審議に入ってしまいました。 将に、「コロナウィルス騒ぎ」(言葉に不適当なことがあればお詫びします。)に乗じた「火事場泥棒」の法案審議です。
黒川東京高検検事長の定年延長については、安倍首相は2月13日の衆院本会議で、黒川東京高検検事長の定年を半年延長した閣議決定は、法解釈を変更した結果だと弁し、国家公務員法の定年制は検察官に適用されないとした人事院の1981年の国会答弁について、「当時、検察庁法に基づき除外されると理解していたと承知している」と認めつつ、「検察官も国家公務員で、今般、検察庁法に定められた特例以外には国家公務員法が適用される関係にあり、検察官の勤務(定年)延長に国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」と述べました。 また、森まさこ法務大臣は、「検事も国家公務員であり、公務員の一般法である国家公務員法を適用して延長を認めた。」などと答弁しました。 これらの各答弁が全く法律的ではないことについては、4月9日付コラムで述べたとおりです。 彼らは、「改正前の検察庁法と国家公務員法との解釈の中で検事長の定年延長は合法である。」と解釈したのです。 そうであるなら、彼らは、「喫緊の必要性」である「黒川検事長」の定年延長を、ごり押し・違法な行為によりて65歳とすることができたのです。政府の考えでは「現在の検察庁法と国家公務員法との解釈で定年延長は合法」なのですから、検察庁法の改正は「不要・不急」の問題であるはずです。
それを現在の大変な状況下において、検察庁法を改正しようとした動機は何なのでしょう? 現在、黒川検事長は63歳数ヶ月の年齢で、65歳未満です。 今回の定年延長がなければ、既に退官し公証人か弁護士になっていたかもしれません。 既に63歳で退官した検事で65歳未満の者を、改正検察庁法で再び検事の職に戻すことはできません。それは法律論理として当然のことです。
改正法が施行されるときに65歳未満の検事は、定年が65歳ということになります。
政府の考えは、『黒川検事長は、「改正法が施行されると思われる日には65歳未満」の検事ですから、検察庁法を改正することによって堂々と検事総長になることができる』というのでしょう。
しかし、このロジックは誤っています。
黒川検事長が滿63歳の誕生日(退官日)から現在も検事の地位にいることが法的には違法なのです。(その理由については前回のコラムで申し上げたとおりです。) 黒川検事長は、既に定年退官を過ぎた検事としての法的資格がない一私人に過ぎません。
これまで黒川検事長の発言を聞いたことがないような気がします。 同じ法律家として、本当の法律論を聞きたいものです。 「本当に間違いはないのですか?」と。