梅雨も真っ盛りの蒸し暑い夜でした。
風呂上がりの火照りを取ってから、夜更かしの夫をリビングに残して眠りにつこうとしていました。
「オーイ、オーイ」リビングから夫が大声で呼んでいます。
(また、発作?)夫は腎臓結石の持病を持っています。
ベッドから飛び起きてリビングに行きました。
「どうしたの?」発作ではないようです。
「あれ。」と夫はリビングの一角を指さしました。
夫の示す方を見たとき、思わず背筋が寒くなりました。
リビングの床には何やら得体の知れない肉の塊がころがっていました。
「ショウちゃんが咥えてきたんだ。」
「何?」寒気がますます増します。
「子猫だよ。生きてるよ。生まれて間もない。」
目が慣れるにつれて、それが白とグレーの混じった毛の子猫なのが判りました。
「夕べは死んだ鳥で、今夜は子猫だよ。」夫は呆れ顔です。
前夜のことです。
その夜と同じように寝付こうとしたときです。
「何だ、これー!」と夫が叫んでいました。リビングの床には死んだばかなのでしょう。生暖かい小鳥が置いてありました。傍らにはショウちゃんが自慢げに毛繕いをしていました。
ショウちゃんは狩人なのです。
その夜は事情が違いました。
子猫は生きています。
「どうするんだ?」
「どうするって、飼うしかないでしょ。ショウちゃんが連れてきてしまったんだから。」
「飼うっていったって、ショウちゃんは病気なんだから、子猫にうつったらどうするんだ?」
「何とかなるでしょ。」そして、子猫は我が家の一員になりました。
名前は「吉」に決まりました。子猫も多分お城の公園に捨てられていたのをショウちゃんが救ったから幸運だったろうし、我が家にとっても幸運かもしれないということだったからつけました。普段は「キッちゃん」と呼んでいました。
これで我が家の家族は、夫、ミック、ショウ、吉、そして、このお話をしている私になりました。