コラム

丸ノ内線の車内にて

久しぶりに東京の出張があり、新宿から丸ノ内線に乗って霞ヶ関に向かった。

車内は比較的空いていたのだが、私の立っている目の前には若干違和感のある光景があった。

というのは、どう見ても事務職ではなく、黒いTシャツを着た、頭が丸刈りで濃いめのサングラスをかけた人が座っており、その人のものと思われるビジネス鞄が棚に乗せられていたのだ。

この取り合わせは、どう見てもアンバランスで、座っていた人が、それを持って街中を歩く光景が浮かばなかった。

もしや?・・・・

などと考えてしまった。

しかし、仮にその人が鞄を置いたままにして下車した場合には、その杞憂というか不安は一層現実味を帯びる。

私は、変な正義感に囚われて、その人が降りるまで見届けようと思った。しかし、霞ヶ関までに降りなかったらどうしようとも考えた。私が降りた後に何かが起きてしまったら、私はどうしたらよいものか?

 

幸いにも、その人は新宿御苑で降りた。鞄を棚から下ろして。その後ろ姿を見送ったが、やはり違和感のあるものだった。

安堵感とともに、これほどまでに考える自分が可笑しかった。

 

私の周りには、座っている人も、立っている人も、平和そうにスマホをいじってゲームに興じる人、メールを送信し続ける人がたくさんいた。