コラム

「一体何だろうね?」です。

昨今、銀行が取立の困難な貸付債権を債権回収会社に譲渡することがよくあります。
そのようなとき、債務者から債務整理等の依頼を受けた弁護士は、債権を譲り受けた債権回収会社と返済等の交渉に入ります。

ところで、債権譲渡をしたときには、民法467条には以下のような指名債権を譲渡した場合の対抗要件の定めがあります。
民法467条
1 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし(中略)なければ、債務者その他の  第三者に対抗することができない。
2 (略)
債権譲渡は債権者と債権を譲り受ける者(個人でも法的には可能です。)との債権譲渡契約が締結されて実現するわけですが、基本的に債務者はその契約の当事者ではなく、債務者の知らないところで債権譲渡契約が成立することがほとんどです。
467条の定めは、債権譲渡がなされたときには、譲渡人(債権者)から債務者に対して債権譲渡をしたことを通知しなさい、そうでなければ債権譲受人が債務者に対して請求することはできませんということを定めているのです。
もっとくだけた言い方をすると、債権譲受人が「僕が債権をAさんから譲り受けた。だから支払って欲しい。」というだけでは、債務者は本当に債権を譲り受けた人かどうか判りませんので、その請求を拒絶することができます。
譲受人が債務者に請求することができるためには、譲渡人(旧債権者)が債務者に「私のあなたに対する債権を、(誰々)さんに譲渡しました。」という通知をしなければならないのです。

ところが、A銀行がB債権回収会社に債権を譲渡したとき、上記の原則からすると、私にとっては怪しげな通知が来ることが多くなりました。
それは、B債権回収会社がA銀行の通知業務の委託を受けて、本来A銀行がなすべき債権譲渡の通知を債務者に送付するということが行われているのです。
前述のとおり、民法467条1項の債権譲渡通知は、債権を譲り受けたとして、嘘の債権者が請求することができないようにすることに主眼があったはずです。
ですから、債権譲渡をした人でなければ通知をすることはできず、それを第三者殊に債権譲受人がすることを容認することはあり得ない話なのです。
しかし、「通知業務委託(契約?)」などというものを介することにより、実質上、467条をくぐり抜けているのです。

これが銀行や債権回収会社ではなく、一般私人の間でなされたとしてみましょう。
Cさん(債権譲渡人)がDさん(債務者)に対する債権を第三者であるEさんに譲渡したとして、EさんがCさんから通知業務の委託を受けて、Cさんのなすべき債権譲渡の通知をなしたとしましょう。このような場合、債権譲渡の通知がないとして訴訟になったとき、裁判所は、通知業務委託が有効であると判断するでしょうか?

金融機関等は、若干、力業(チカラワザ)で物事をごり押しし過ぎているのではないでしょうか?
大変、違和感を覚えます。